住宅は一生の中で一番大きな買い物と言えるべきもので、現在は良質な住宅に長く住むという考えが主流になっています。しかし、どういった住宅が優れたものなのかというのはなかなかわからないでしょう。そこで知っておきたいのが「住宅性能表示制度」です。
住宅性能表示制度は、国土交通省によって平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(通称:品確法)に基づき、同年10月に運用が開始された制度です。
国に登録されている第三者機関によって、客観的に住宅性能を評価するために定められた基準を用いて公正にチェックをして等級を付けます。
住宅性能評価は設計・企画段階と施工・完成段階の2段階で評価を行い、設計段階で評価を経ていなければ施工段階の検査は受けられません。 建てる前の設計企画段階では、設計段階で求められている性能どおりに設計されているかを設計図書等で評価し、建設中・建築後では、建設工事や完成した段階で設計図書どおりに施工されているかについて現場検査を行い評価します。
戸建住宅の場合建築中は原則現場検査を4回行います。全部で10項目の基準があり、その内4項目が評価の必須項目になっています。
いわゆる地震が起きた時の「倒壊のしにくさ」、「損傷の受けにくさ」を評価する項目です。
「倒壊のしにくさ」に関しては数百年に一度発生し得る極めて稀な大きな地震を想定し、その1~1.5倍の地震力で倒壊や崩壊をしないレベルを強度の条件としています。
「損傷の受けにくさ」に関しては、数十年に一度発生し得るレベルの大地震の1~1.5倍の地震力で損傷を受けないかどうかを判断材料とします。ただし、ここで言う「損傷」は倒壊や崩壊のレベルでは無く「大規模な工事が伴う修復を要しないレベル」とされています。
いわゆる年月が経っても、土台や柱などの部材が腐ったり傷んだりしないようにする対策がなされているかを評価する項目です。例えば木造の場合はシロアリの害への対策が取られているか、鉄骨造などの場合はメッキや塗装などでサビへの対策が取られているかが評価の対象です。
いわゆる配管の点検や清掃、故障した時の補修のしやすさなどを評価する項目です。 住宅は人が住んでいると、どうしても汚れたり老朽化したりします。特に水道管などは傷みやすく掃除や点検などが必要となるので、それらの作業が容易にできるかが重要になります。
具体的には、掃除口が設けられているかどうか、配管がコンクリートに埋めこまれていないかが評価材料です。 また、場合によってはどうしても配管の交換が必要な時も出てくるので、配管などを容易に交換できるかもメンテナンス性能の評価対象となっています。例えばマンションなどでは、共用の配管が共用部分に設置され専有スペースに入らずにメンテナンスができるかなどが挙げられます。
いわゆる壁や窓の断熱がなされているかを評価する項目です。 家づくりの課題のひとつに省エネ性が挙げられます。この項目では冷暖房に使用するエネルギーの削減の対策がどのレベルで取り入れられているかを評価し等級をつけます。なお、等級は省エネ法に基づいた「住宅の省エネルギー基準」のレベルに準拠しています。
住宅性能表示制度を受けるメリットとして、まず万一トラブルが起こった場合は専門家が迅速に対応してくれるという点が挙げられます。
トップレベルの性能を持っていると評価された住宅であっても音漏れや空き巣などのトラブルが起きないとは限りません。また、住宅関係のトラブルは一度起こると裁判などで長引くことがほとんどです。この制度を実施し、評価書の交付を受けた住宅は「指定住宅紛争処理機関」という、裁判なしで迅速にトラブルを解決してくれる機関に依頼できます。他にも、住宅ローンの金利優遇やフラット35の適応、地震保険の割引など金銭面でのメリットもあります。
逆にデメリットとして挙げられる点はコストが掛かるというところです。住宅性能表示制度そのものを受ける際に掛かる費用は大体10万円~20万円程度です。さらに、評価を上げるために出来るだけ良いものを使う必要があり、その分の建築コストが上乗せされます。 また、評価対象となっている箇所以外は調査しない上、評価を受けたとしても絶対に不具合が起きないということではないので、アフターメンテナンスや定期検査などが充実しているハウスメーカーや工務店を選択しましょう。
住宅性能表示制度を活用することで住宅の性能を可視化することが出来るため、より安心な家づくりにつながります。優れた性能の家に住みたいとお考えの場合は一度検討してみることをおすすめします。