2025年4月に建築基準法が大幅に改正されることをご存じでしょうか。
今回はこの法改正で具体的に何が変わるのかを述べていきます。
この法改正で注目されていることの一つが4号建築物の扱いについてです。4号建築物とは「木造で2階以下、延床面積500㎡以下の住宅」のことを指し、この条件に当てはまれば構造審査を省略できるという「4号建築物の特例(※)」というものが設定されていましたが、今後の法改正に伴い、建物の基準が見直されることとなりました。(※10/27公開の記事を参照)
この法改正では新たに「新2号建築物」と呼ばれる建物が追加されます。木造2階建て以上の戸建て住宅、または木造平屋建てで延床面積が200平方メートルを超える建物はこれに含まれ、今までは4号建築物の特例が適用されていた建物でも構造審査が義務付けられるようになりました。
日本で建てられている家のほとんどがこれに当てはまるため、今後構造計算を行う建物が多くなることが予想されています。
この法改正でもう一つ注目されているのが「省エネ基準への適合の義務化」です。 2025年度以降、新しく建てられる全建築物に省エネ基準への適合が義務付けられます。これまで省エネ基準の適合は非住宅の中規模以上の建築物に限られていましたが、改正後は建物の規模や、住宅か非住宅かに関係なく義務化されます。
省エネ基準に適合している住宅かどうか判断する2つの基準が定められています。 1つ目は「一次エネルギー消費量基準」、2つ目は「外皮性能基準」といいます。
ここでいう「一次エネルギー消費量」とは、いわゆる冷暖房や照明設備など家庭で消費されるエネルギーの消費量を一つにまとめたもので、総消費量が基準より小さければ省エネ性能の高い住宅といえます。
「外皮性能」とは壁や床、天井など建物の外回りの省エネ性能のことです。外皮平均熱貫流率(通称UA値)と冷房期の平均日射熱取得率、通称(ηAC値)の2種類に適合していれば外皮基準はクリアしたとみなされます。 「UA値」は、住宅の内部から床や外壁、屋根や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体の面積で割った値です。数字が小さいほど熱が逃げにくく省エネ性能が高いことを示します。「ηAC値」は、窓から直接侵入する日射による熱と、窓以外から日射の影響による熱伝導で侵入する熱量をおおよその冷房期間で平均化し、外皮面積の合計で割った値です。値が小さいほど住宅内に入る日射による熱量が少なく冷房効果が高くなります。
この法改正は住宅や建築物の省エネ化を主な目的とし、国は「2050年カーボンニュートラルの実現」「2030年度温室効果ガス46%排出削減」を政策目標に掲げています。カーボンニュートラルとはCO2の排出量を0にするという意味で、世界的な脱炭素の流れの中で建てられた目標です。また省エネ住宅の普及に伴い、太陽光パネル設置や断熱材使用料増加など建築物の重量化する傾向にあり、住宅の構造の強度をよりしっかり確かめる必要が出てきました。住宅の省エネ性向上と安全確保の両立を実現するための法改正と言えます。
今回の法改正で、より断熱や制震などについて考えを深める必要が出てきたのではないかと思います。
省エネ対策と地震などの災害への強さを兼ね備えた家こそが本当に住みやすい家と言えるでしょう。