極めて稀に起こる大きな地震の脅威は、耐震等級3の建物(※1)であっても、 構造体が相当程度損傷を受けてしまうような非常に大きなものです。このような大きな地震を力と捉えて、それに対して力(硬さ)で抵抗する対策をしても地震の揺れが想定外に大きかったり、余震が繰り返し続いたり、共振してしまうと対策の効果は小さくなってしまいます。
ところが、地震をエネルギーと捉えるとどうでしょうか。地震は運動エネルギーなのです。極めて稀に起こる大きな地震から受けるエネルギーは、 だいたい100KN・M(※2)です。 このように地震をエネルギーと捉えると、「エネルギーの転換」が対策に利用できます。エネルギーの転換は、けっこう日常的に目にしたり、利用したりしています。例を示しながらご説明しましょう。
電気エネルギーから熱エネルギーとの転換。これはエアコンなど日常生活に欠かせないものに活用されています。電気エネルギーと運動エネルギーの転換は電車、逆は水力や風力発電が該当します。熱エネルギーから運動エネルギーへの転換は蒸気機関車などが挙げられます。その逆にあたるのが走行中の車両を停止させるブレーキ。 これは運動エネルギーを熱エネルギーに転換しています。まさにこれが制震工法なのです。「地震にブレーキをかける家」となる訳です。
※1 法律上最高の耐震等級
※2 40坪の木造2階建住宅が、阪神大震災から受ける入力エネルギーの総量
制震GVAや自動車のブレーキの機構は、摩擦を利用して運動エネルギーを熱エネルギーに転換。 摩擦により発生した「熱」は空気中に消散します。制震GVAの場合で言うと、振動エネルギーを熱(エネルギー)に転換し、その熱を放出することで消費していき、揺れが抑えられるのです。
地震で建物が揺れるのは“エネルギー”によってであり、振動エネルギーさえゼロになれば揺れは収まるのです。 GVAの制震装置は(分子間の)摩擦を利用して、効率よく振動エネルギーを消費できるようになっています。