家を建てる部材の一つに梁(はり)というものがあります。柱と同じくらい重要な部材である梁ですが、一般認知度はあまり高くないようです。今回は梁の役割についてお話いたします。
柱は地面に垂直に立てて床や壁を支える部材なのに対し、梁は柱と柱の間に水平に配置することで屋根や床を支える部材です。 梁の役割は主に二つです。
一つは床を支えることです。家具や家電などの重さ、人の重さなど床には様々な荷重がかかっています。これらの荷重を、異なる大きさの梁や柱を組み合わせて分散化し、建物を支えています。
もう一つの役割は地震の揺れに抵抗することです。梁は水平な部材なので地震の力を直接地面まで伝達させられず、柱を補助することで間接的に揺れに抵抗します。地震に抵抗する力を持っているのは「大梁(おおばり)」という柱に直接つながっている梁のみで、他の梁は重力のみに抵抗します。
梁には様々な種類があり、使用する場所や特性によって名称が異なります。梁の中で最も重要なのが「大梁(おおばり)」で、柱と柱をつなぐように配置されます。大梁と大梁の間に架け渡すのが「小梁(こばり)」です。小梁に生じた力は大梁を経由して柱に伝達されるので、大梁よりもサイズは小さくなります。そして、小梁に取り付けるさらに小さいものが「孫梁(まごばり)」です。
梁は使用している場所によっても呼び方が変化します。木造の場合は床と屋根で梁を使い分けています。屋根を構成している骨組みを小屋組と言い、その小屋組に使用される梁を「小屋梁」と言います。建物の1階や2階の床を構成している骨組みを床組と言い、床組に使用される梁を「床梁」と言います。鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は基礎にも梁が用いられ、これを「基礎梁」と呼びます。
力学的な特性によっても梁は使い分けされています。両端が自由に回転できる梁を「単純梁」と呼び、鉄骨造の場合小梁は単純梁として扱われます。片方が固定され、もう片方が自由になっている梁を「片持ち梁」と呼び、軒やバルコニーに用いられます。そして、両端が固定された梁は「両端固定梁」と呼ばれます。
梁の材料となるのは木、鉄骨、鉄筋コンクリートの3種類で、どの素材を使用するかは建築物の規模によって異なります。 木造の梁は主に小規模店舗などで用いられており、ほとんどは杉やカラマツなどの針葉樹から作られています。鉄骨の梁は駅や大規模な商業施設などで使用されており、中でもH形鋼と呼ばれる断面がアルファベットのHの形をした部材が多く使われます。
鉄筋コンクリートの梁はビルやマンション、空港など強い強度が必要な建物で用いられます。コンクリートは引っ張られる力に弱いため、引っ張られる力に強い鉄筋をコンクリートの中に入れて弱点を補っています。
梁は柱と同じくらい重要で、様々な種類の梁がそれぞれ違う役割を果たしています。 梁についての知識を深めることも、地震に強い家に住むための一歩になるのではないかと思います。