上記3点の理由を避けるため、ダンパーと木材とを金物で介する機構とする必要があった。
ダンパー(制震材)は様々な素材が存在します。その特性をしっかり理解することが大切です。
仕組み | 極軟鋼の降伏変形する際のエネルギー消散(熱エネルギー変化)を利用する。 |
---|---|
利点 | 安価で扱い易い材料である。 |
欠点 |
|
仕組み | 純度の高い鉛が大変形領域で優れた繰返し塑性変形能力を示すことを利用するものである。 |
---|---|
利点 |
|
欠点 |
|
仕組み | 速度依存型の減衰機構として、車両用として広く使用されているショックアブソーバーを大型化したピストン式のものがある。 |
---|---|
利点 | 小振幅から大振幅まで振幅に応じた減衰力が作用する。速度に比例した減衰力を大略仮定することで、減衰定数の形式で性能を設定することができ、応答スペクトルなどを介して効果の把握が比較的容易にできる。 |
欠点 |
|
仕組み | オイルダンパーと同じ原理で高分子系の高粘性の液体を鋼板の間に充填するものである。 |
---|---|
利点 | 上記オイルダンパーと同じ。 |
欠点 | 精度を維持するための装置が大型になりコスト的な制約がある。 |
仕組み | 2面間の固体摩擦を利用する。 |
---|---|
利点 | 鋼材ダンパーなどに比べ、多くの繰返しに対して安定した性能を発揮することが期待でき、振幅や振動数に依存せずコンスタントな摩擦力を得る機構とすることも可能。 |
欠点 |
|
仕組み | 粘弾性体のせん断変形200%~500%を利用する。 |
---|---|
利点 |
|
欠点 |
|
上記の種々のダンパーのなかで、粘弾性体を採用した理由は、上記木造住宅の特性に最も合致していること、 かつ一定条件を満たせば、大地震後ダンパーの取替えが必要のないという理由からである。
粘弾性体には非加硫ゴムやアクリルの樹脂がある。黒いゴムに比べアクリル樹脂は経年変化に強い。
しかしながら化学的素材に変わりないため、経年変化に伴う品質の維持が課題となった。 製造及び、製品の品質、性能確保にはダンパーメーカーの技術水準の高さと、試験研究成果、物件での実績の豊富さが重要な要件となった。 総合的に判断した結果、GVA工法で採用する粘弾性ダンパーは、高層ビルで最も多くの実績と信頼性の高いデータのあるスリーエム ジャパン株式会社社製のVEMとなった。
現在GVAダンパーは厚み5ミリを確保している。
また、左右15ミリでロックすると、拘束板同士がぶつかり、ダンパー破断を防ぐスライド・ロック機構となっている。
この理由は、振動という繰り返し現象、あるいは大きな余震を想定して、ダンパーそのものの破断を防ぐことである。
そのためにはダンパーの塑性変形許容比である500%以内に余裕をもって収める必要があった。
具体的なロック状態は静的な加力実験(建築基準法で規定されている変形荷重耐力試験)ではフレームの変形角1/100におこる 。
しかし、動的実験ではダンパーが速度依存を示すため、加振速度によりロック時期が異なってくる。 行った壁実験では1/60でロックが確認された。
ロック後、静的加力試験では、最大8tの最終耐力を発揮する。
このとき、GVA工法は耐震工法となって、筋交いや面材の耐力と合計され、予期できない巨大地震でも、ダンパーを壊さず踏ん張るように設計されているのである。
同じ数量のダンパーを壁に設置する場合フレーム内のどの個所に設置するかで、フレーム頭部の変形量とダンパー部の可動変形量の比は変化します。
例えば、フレーム変形によってダンパー部の変形が幾何学的変形に2倍であれば、フレーム換算剛性とダンパー部剛性の比が4倍に上がります。
フレーム剛性が高いと、ダンパーは可動しなくなります。
これは、力が接合部及び、木材のめり込みや曲げに流れるため、フレーム換算剛性が大きくなり、ダンパーが動かず、減衰できないことを表しています。
これでは構造用合板での補強と質が変わりません。
逆にフレーム頭部の変形量とダンパー部の可動変形量の比が小さくなるとダンパー部は効率よく運動します。
フレームの減衰定数は大きくなりますが、フレームの換算剛性は飛躍的に小さくなってしまいます。
つまり減衰定数とフレーム剛性はトレード・オフの関係があり、結果としての減衰力は大きな差がなくなる。
以上検討に加え、木造住宅が揺れるとき、どこに制震ダンパーがあったほうが効率がよいか、その他の木造特有の性能を捉え、減衰という性能目標を達成させたのがGVAフレームのダイヤモンド形状なのです。
制震化する建物の耐震性能は地震力に対して建物を塑性化(建物が壊れる状態)させずに常に弾性状態にする事が理想です。
そのためにダンパーは初期の弾性振動の範囲でなるべく効率良くエネルギーを吸収させる必要があります。
そのためにはGVAダンパーの初期剛性は通常壁のもつ初期剛性に近い動的剛性を持たせることで、建物自体を壊さないあいだに減衰性能を発揮させることができるのです。
壁倍率は法律上5倍までという規定になっています。フレームの壁倍率5倍の時には、「0.2トン×5倍=1トン」の水平力が柱頭部に掛かる前提となります。
フレームの縦横比が『3:1』の場合であれば、引き抜き力は「3トン」となります。
柱に掛かる建物重量は、ほぼ0.5トン程度であるから、差し引くと2.5トンのホールダウン・アンカーが必要となっている訳です。
GVA工法は両筋交いとの併用が可能で、制振壁として間仕切りを別に設ける必要がありません。 動的繰り返し加振試験によると、GVA工法の初期剛性(1/120変形時のフレーム剛性)は合板と同等です。 併用する場合には、4倍(両筋交い)+2.5倍(GVA)の、6.5倍の倍率相当になります。「2トン×6.5倍=1.3トン」の初期剛性を有しています。 そのため、引き抜き力は、「3.9トン」要求されます。柱に掛かる建物重量0.5トンを差し引いて『3.4トン』のアンカーが必要となります。
しかし、GVA工法の主目的は、初期剛性を高める(1/120の変形時0.2G以上の外力に耐えることを目指す)ことだけではなく、 大変形が生じるような大地震の際に大きな耐力効果を発揮することです。 大地震の際には水平力が1G掛かると言われています。Ds(材料の粘りや減衰を考慮した低減係数)を考慮しても0.5Gが建物に横から掛かかります。 大地震への対応という意味では、アンカーの耐力基準は短期耐力ではなく、最大耐力が重要なのです。 短期基準接合引張り耐力に対して、 2.5倍(0.5トン÷0.2トン=2.5)の最大耐力が必要になります。
よってGVA工法には3.4トン×2.5倍=8.5トンの最大耐力が出るアンカーが必要となります。 3トン用(GVA推奨品B―HD30は実質4トン)のアンカーは、どのメーカーでも最大耐力6トン程度(当社指定品は8.5トン)を保有しているため、GVA工法採用の際には必ず柱頭に2トン用、柱脚に3トン用のアンカーを設置する必要性があります。
GVA[ジーバ]は木造住宅の特性を十分考慮した制震システムである!