SL-Cubeとは
SL-Cube〈エスエル‧キューブ〉は、建物の「完全倒壊」‧「完全崩壊」を防止するという地震対策を目的とした補助装置です。名称のSL〈エス‧エル〉はSoft Landing〈ソフト‧ランディングー軟着陸〉を意味していて、積層したキューブが段階的に軸力を伝達させる機能をイメージしています。
SL-Cube装置と地震対策
角型鋼管から切り出した立方体キューブ単体をボルト接合して積層したものがSL-Cube装置です。積層したキューブは軸力伝達機構により段階的にエネルギーを吸収します。地震で破壊が予想される柱の鉛直支持力喪失後に、柱に代わって軸力を受ける補助的役割を担います。
「 SL-Cube 」を設置することによって想定される南海トラフを震源とする巨大地震などの発生時における瞬時の倒壊を阻止し、建物滞在者の避難時間を確保し、同時に、圧死に至るような完全倒壊‧崩壊を防止して避難空間を確保することを目指しています。
今、SL-Cubeを設置する意義
旧耐震基準の下で設計‧施工された耐震性の低い建物は、既存不適格建物と定義され、耐震性を確保するように国から指導が行われています。しかし既存不適格建物の多くが、未だ耐震改修や耐震診断を行えていないのが現状です。 また、近年南海トラフを震源とする大地震発生が間近といわれており、既存不適格建物などの耐震性が低い建物 は、耐震補強を行う事が最善策です。全体補強がかなわない場合には最悪事態の回避する地震対策を早急に行うことが賢明です。
そんな耐震診断‧耐震改修が困難な建物への地震対策として
「SL-Cube」が支えになります。
SL-Cubeについてより詳しく知りたい方へ
SL-Cubeの特徴01
減災機能
「 SL-Cube 」は、⼀般的な耐震補強策とは異なり、破壊が予想される柱の軸耐力喪失後の補助材として、「倒壊‧崩壊防止」に的を絞った新たなコンセプトに基づく地震対策構法で、建物の倒壊‧崩壊に伴う人的‧社会的影響を少なくするための役割を果たします。
SL-Cubeの特徴02
ピンポイント構法
建物の耐震上の弱点を見付け、そこにピンポイントで「 SL-Cube 」を設置する「 ピンポイント構法 」が、他の部材への破壊の伝播を食い止め、建物全体の倒壊‧崩壊の防止に繋がります。
SL-Cubeの特徴03
独立した機構
「 SL-Cube 」は、建物とは構造上独立した状態で設置されており、建物が本来持っている力学的特性を保持させた状態で地震に抵抗します。大地震時により柱が損傷して建物重量の支持能力を失った際に、「 SL-Cube 」はその代替機能を発揮出来るように工夫されています。
SL-Cubeの特徴04
実験に基づく性能評価
多くの実大実験・模型実験を通して「 SL-Cube 」の性能が評価‧検証されています。実験で得られた結果は、「 SL-Cube 」の構造や組み立て個数などの決定に生かされています。
2020年広島工業大学での実験 | 安全率を1.5として、1列420kN/1.5=280kNを一列当たりの許容支持力として設計をおこないます。 |
2011年7月岡部での実験 | 2013年12月つくばセンターでの実験 | 2013年建築研究所での実験 | SL-Cube 圧縮耐力試験の様子圧 |
2017年7月つくばセンターでの実験 |
SL-Cubeの特徴05
施工の迅速性
「 SL-Cube 」は施工が容易で、工期も1週間程度※とコンパクトな施工が可能です。また、施工時に火気を使用が不要なこと、資材の重量は人力で運べる程度なため、重機が入る必要がなく小規模な工事で施工可能です。「 SL-Cube 」設置の工事期間中における騒音および建物の使用制限も最小限に抑えられます。
※物件ごとに異なります。
SL-Cube の施工フロー
①ベース部施工(アンカーおよび無収縮モルタル打設)
Cube設置箇所に型枠を設置、無収縮モルタルを流し込みベース(Cube基盤)を設けます。
無収縮モルタルの練り混ぜにはハンドミキサーとポリバケツを使用します。
なお、下部固定のケースでは、あらかじめCubeの固定のためのアンカー筋を埋め込んでおきます。
② Cube組付け
Cubeの積層は手作業で行い、インパクトドライバ(小型電動工具)等を用いてCubeの接続ボルトの締め付けを行います。
なお、Cube最上段には隙間調整材を配置する事もあります。
隙間調整材を配置したCube最上段を取り付けます。
③ ベース部脱型・仕上げ
Cubeの組付け完了後、ベース部の型枠の取り外し作業および塗装が剥がれた箇所や汚れのある箇所への塗装の修整塗り(タッチアップ)を施します。
⼀時的に床材の取外しを行った箇所の復旧など仕上げ作業をおこないます。
養生の撤去、および清掃など行い、作業を完了します。
- ※SL-Cubeは、柱の支持力低下に伴う建物の「完全倒壊」‧「完全崩壊」を防止するために設置するもので、補助支柱材としての役割を果たします。耐震補強ではないこと、恒久的な耐震対策ではないことをご理解いただいた上で設置しております。
- ※耐震補強が義務化されている建物は対象外となります。
- ※対象建物は、鉄筋コンクリート造3~4階建て程度まで(平面形状によっては5階まで)それぞれの建物の状況に合わせて、効果的な配置について構造的な検討をおこないます。
研究メンバー
開発者:故 真崎 雄⼀
‧アドバイザー: 井口 道雄 東京理科大学名誉教授
‧メンバー: 細川 洋治 細川建築構造研究室
‧メンバー: 真崎 純 (株)マサ建築構造設計室
‧メンバー: 中川 幸洋 (株)テクノラボ
‧メンバー: (株)MASA LABO
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