構造の地震対策は耐震、制震、免震という切り口で3つに分類することが出来ます。前々回のその①耐震構造、前回の②制震に引き続き、今回は最後にその③では免震について紹介します。
免震構造は、柔らかく大きく変形する部分(免震層)を建物に設けます。地震が発生した際にその地震の衝撃は地盤から建物に伝わりますが、免震構造があれば建物に入力される地震力を軽減させることが出来ます。建物は、その高さや固さ(耐力)、形状によって特有の周期(リズム)を持っています、これを固有周期といいます。地震発生時にその衝撃波の周期と建物の固有周期がシンクロ(同調)すると、揺れが増幅されて建物は激しく揺れます。この現象を共振現象といいます。公園にあるブランコを大きく揺らすためには、揺れるリズムと漕ぐリズムを合わせますよね?それと全く同じ現象です。この共振現象が起こると、耐震等級3などどんなにガチガチに固く作った住宅でも大きく激しく揺れてしまいます。免震構造では、免震層を基礎部分に設ける基礎免震が一般的です。基礎免震は、基礎の上部に免震装置を置きその上に建物本体を載せる工法です。
免震装置は一般的な仕組みとして高減衰ゴムと鉄板とを交互に挟んだ積層ゴムが使われます。積層ゴムは剛性が大きい為、積層ゴム単体で採用すると、重量の軽い戸建住宅ではうまく地震対策として機能しないので、転がり支承システムなどと併用して採用することが一般的です。積層ゴムはゴムの変形で地震力を低減させます。転がり支承は、鋼球が転がったりすることで地震力を低減させます。
免震装置はうまく機能すれば非常に地震対策として効果がある工法ですが、採用するにあたっては何点か注意する点があります。
免震構造を設計する際はクリアランスの確保に注意しなければなりません。免震建物は地震時に揺れるため、隣地とのクリアランスを十分に確保します。将来のメンテナンスも考えて、免震層に人が入って作業をするためのスペースも確保しておかなくてはなりません。
免震建物は強い風でも揺れる可能性があるため、強い風が日常的に吹く場所では、風の影響がないことをよくよく検討する必要があります。
先ほども述べましたが、免震装置は定期的なメンテナンスが必要です。また、大きな地震が来た後にも点検は必要です。初期費用だけでなくこのようなランニングコストもしっかり考える必要があります。
高層ビルやマンションの場合はだいぶ普及してきた免震工法ですが、戸建住宅では普及率は伸び悩んでいます。理由として最も大きなものはやはり初期コストが耐震や制震に比べてはるかに高いことが言えます。
いかがでしょうか?免震についておわかりいただけたでしょうか?理論的には免震はとても優れた地震対策ではありますが、初期コストが高いなど、いくつかのハードルがあります。戸建住宅市場での普及率は1%もないと思います。だからと言って免震を検討しないのではなく、地震のリスクをどう考えるかによって、耐震、制震、免震のどの工法を採用するかをしっかりと見極めていきたいですね。